業務とプロセス
エージェンティック文書処理とは: AIエージェントが文書業務の次の段階を自ら決める処理方式の完全ガイド
KDL作成
エージェンティック文書処理とは、AIエージェントが文書を読んだうえで、何を確認し、どのツールを使うかを自ら決めながら、定められた目標と権限の範囲内で業務の流れを最後まで進める文書処理の方式です。
エージェンティック文書処理が必要になった背景
文書ごとに、次にすべきことが違っていました。
従来の文書処理の自動化は、あらかじめ描いておいたフローチャートに従います。この様式なら、この項目を抽出する。この値が空なら、あの画面に送る、という具合です。様式が数種類に固定されている業務では、この方式はうまく機能します。
しかし、実際に受け付ける文書は、そうでない場合が多くあります。1つのファイルに複数の書類が混ざって届いたり、同じ申請者でも案件ごとに提出される証憑が違ったりします。値が空のときに、補完を求めるか、別の書類から探すかを判断しなければなりません。フローチャートにすべての分岐をあらかじめ描き込もうとすると、規則が際限なく増え、規則同士が矛盾し始めます。
エージェンティック文書処理は、この分岐の判断を、案件ごとにエージェントに任せます。人は目標、権限、判断基準を定め、エージェントはその範囲の中で次の段階を選びます。規則を増やす代わりに、判断基準を文章として整理しておけば、新しい書類の組み合わせが入ってきても、フローを描き直す必要はありません。
エージェンティック文書処理の正確な定義: IDPとの違い
IDPとエージェンティック文書処理の3つの軸の違い
第一に、流れを決める主体が異なります。IDPは、人が設計した処理の順序をそのまま実行します。エージェンティック文書処理は、目標と規則が与えられると、案件ごとに必要な段階と順序をエージェントが決めます。
第二に、ツールの使い方が異なります。IDPでは、分類、認識、抽出の機能が決められた位置で呼び出されます。エージェンティック文書処理では、必要に応じてエージェントが抽出を改めて依頼したり、業務システムを照会したり、別の書類を開いて照合したりします。
第三に、例外の扱い方が異なります。IDPは、規則にない状況をそのまま例外として送ります。エージェンティック文書処理は、まず取り得る代替案を試し、それでも結論が出ない場合や権限の外にある場合に、人に引き継ぎます。
両者は代替関係ではありません。様式が固定されていて規則が明確な区間では、決められた流れのほうが速く、予測もしやすくなります。そのため、判断が分かれる区間にだけエージェントを置く構成が現実的です。
エージェンティック文書処理を成り立たせる4つの要素
エージェントが安全に判断するための4つの要素
第一に、目標です。申請案件の書類が充足しているかを判定し、結果を登録する、というように、終わりの地点が明確な目標を与えます。目標があいまいだと、エージェントの行動もぶれてしまいます。
第二に、ツールの一覧です。文書認識、項目抽出、システム照会、登録など、エージェントが使えるツールを明示し、ツールごとに入力と出力の形式を定めます。一覧にない行動はできないようにするのが基本です。
第三に、判断の根拠の記録です。どの文書のどの値を見て、どの規則に従って次の段階を選んだのかを残します。記録がなければ、検証も改善もできません。
第四に、人の承認の箇所です。システムへの値の書き込みや顧客への通知のように、元に戻しにくい行動の前には承認の段階を置きます。承認の画面には、エージェントが選んだ行動と、その根拠を一緒に表示し、担当者がすぐに判断できるようにします。
4つの要素のうち1つでも欠けると、エージェントの判断は運用で使いにくくなります。特に根拠の記録と承認の箇所は、導入後に付け加えるとフロー全体の手直しが必要になるため、最初から設計に組み込みます。
エージェンティック文書処理の実際の適用方法
判断の範囲を狭く始めます
最初から承認や差し戻しまで任せるのではなく、書類の充足確認や不足項目の発見のように、元に戻しやすい判断から任せます。結果が安定してきたら、補完依頼の作成、そしてシステム登録の順に範囲を広げます。
範囲を広げるたびに、前の段階の判断記録を見直し、エージェントがよく迷った箇所と誤った箇所を整理します。
ツールと権限を分けておきます
読み取りだけを行うツールと、システムに書き込むツールを分け、書き込みのツールをどの段階で使えるかを定めます。エージェントが選べる選択肢の範囲をあらかじめ決めておかなければ、予期しない行動を防ぐことはできません。
権限は、担当者の権限より広く与えないようにします。担当者が直接行えない照会や登録をエージェントが行えるようにすると、内部統制の基準と食い違ってしまいます。
決められたフローと組み合わせて使います
すべての区間をエージェントに任せる必要はありません。受付、分類、基本的な抽出は決められたフローで素早く処理し、書類どうしの不一致の解釈や、補完が必要かどうかの判断のように、分岐が多い区間にだけエージェントを置きます。
このように分けると、処理速度と予測のしやすさを保ちながら、判断が必要な案件だけをエージェントが担当できます。どの区間をエージェントに任せるかは、例外に分けられた案件の理由を集めてみると見えてきます。
国内環境でのエージェンティック文書処理
国内の金融と公共分野では、エージェントが外部のAIサービスを呼び出す構成が、ネットワーク分離の規定に抵触することが多いです。そのため、まず判断に使うモデルとツールが社内で動作するかを確認します。
自動承認の範囲は社内規程で定められていることが多いです。また、人工知能基本法は、高影響AIに該当する業務について、人による管理と監督を求めています。そこで、承認の箇所と根拠の記録方法は、フローの設計段階であわせて決めます。
よくある質問
エージェンティック文書処理とエージェントワークフローは同じものですか?
エージェントワークフローは、分類から実行までを1つのフローとしてつなぐ設計を指します。エージェンティック文書処理は、そのフローの中で、エージェントが案件ごとに次の段階を自ら決める方式に焦点を当てています。
エージェントが誤って判断したら、どうなりますか?
判断の根拠と行動の記録が残るため、原因をたどれます。元に戻しにくい行動の前に承認の段階を置いておけば、誤った判断はシステムに反映される前に止められます。
既存のIDPは捨てなければなりませんか?
捨てる必要はありません。決められたフローで十分な区間はそのまま残し、判断が分かれる区間にエージェントを加えるのが一般的です。
どのような業務に向いていますか?
提出書類の組み合わせが案件ごとに異なる審査や受付の業務に向いています。値が空のときに、補完依頼と代替の確認のどちらにするかを判断する必要がある業務も該当します。
処理速度が遅くなりませんか?
すべての案件をエージェントが判断すると、遅くなるおそれがあります。正常な案件は決められたフローで処理し、判断が必要な案件にだけエージェントを使えば、速度を保てます。
判断の記録を監査に使えますか?
使えます。エージェントが参照した値、適用した規則、選んだツール、承認者を記録しておけば、監査と内部統制の資料として使えます。
判断の基準は誰が管理しますか?
業務を理解している担当部署が基準を定め、修正します。基準を変える際は、以前の判断記録を使って影響を確認してから反映する手順を設けます。
書類の組み合わせが案件ごとに異なり、判断が分かれやすい業務をお知らせください。エージェントに任せる区間と承認の箇所を整理してお伝えします。
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