技術と構成
エージェンティックAIとは: 目標を受け取り、自ら計画して実行するAIの完全ガイド
KDL作成
エージェンティックAIとは、目標が与えられると、必要な手順を自ら計画し、必要なツールを選んで実行し、途中の結果を確認したうえで次の行動を調整する性質を持つAIを指す言葉です。
エージェンティックAIが必要になった背景
回答を受けても、仕事は人が続けなければなりませんでした。
生成AIが業務に入ってきて、文書の要約や下書きの作成は速くなりました。しかし、要約を受け取ったあとに必要な資料を探し、システムを照会し、結果を登録する作業は、依然として人が1段階ずつつないでいました。AIが一度質問を受けて一度答えるという使い方にとどまっていたためです。
実際の業務は、複数の段階からなります。何から確認するかを決め、必要なツールを使い、途中の結果を見て次の行動を変えます。エージェンティックAIは、この一連の過程をAIが続けて実行できるようにする方向性を指します。
業務に適用するときに大切なのは、どれだけ自律的かではなく、どこまで任せられるかです。自律性が大きくなるほど、目標、権限、記録、承認を一緒に設計しなければなりません。
エージェンティックAIの正確な定義: 生成AIとの違い
生成AIとエージェンティックAIの3つの軸の違い
第一に、処理の単位が異なります。生成AIは、1つの入力から1つの出力を作る形で使われることが多いです。エージェンティックAIは、1つの目標を複数の段階の行動に分けて処理します。
第二に、外部とつながる方法が異なります。生成AIは、与えられた文脈の中で回答を作ります。エージェンティックAIは、検索、データベース、業務システムといったツールを呼び出して情報を得て、結果を書き込みます。
第三に、結果の扱い方が異なります。生成AIの結果は、人が読んで判断します。エージェンティックAIは、途中の結果を自ら点検して次の行動を修正し、決められた条件のときだけ人に確認を求めます。
エージェンティックAIとAI Agentは、よく一緒に使われます。エージェンティックAIはそのような性質や方向性を指す言葉で、AI Agentはその性質を備えて実際に業務を遂行するシステムを指す場合が多いです。業務の文脈では、性質そのものより、どのシステムがどの業務を担当するかが重要になるため、両者を区別して使うほうが混乱が少なくなります。
エージェンティックAIを成り立たせる4つの能力
業務を続けて遂行させる4つの能力
第一に、計画です。目標を、確認する項目と行うべき行動に分け、順序を決めます。計画は最初に一度立てて終わりではなく、途中の結果に応じて立て直されます。
第二に、ツールの利用です。文書認識、照会、計算、登録など、必要なツールを選んで呼び出し、結果を受け取ります。使えるツールは、あらかじめ定められた一覧の中からだけ選ばせます。
第三に、文脈の保持です。前の段階で確認した事実や途中の結果を記憶し、後の判断に反映します。同じ書類を何度も確認したり、先の結論と矛盾する行動をしたりすることを防ぎます。
第四に、点検と修正です。結果が条件に合っているかを確認し、合っていなければ別の方法を試すか、人に引き継ぎます。点検の基準が明確であるほど、人に引き継ぐ案件は減り、引き継ぐ理由もはっきりします。
4つの能力がそろっても、そのまま業務に使えるわけではありません。どのツールを使ってよいか、どの行動に承認が必要かを組織が定めて、はじめて能力を安全に使えます。
エージェンティックAIの実際の適用方法
行動ごとに自律性のレベルを決めます
すべての行動に同じレベルの自律性を与える必要はありません。照会や確認はAIが自ら行い、システムへの登録や顧客への通知は承認のあとに実行させる、といったように、行動の種類ごとにレベルを分けます。
レベルは、結果を元に戻しやすいかどうかと、誤ったときの影響の大きさをもとに決めます。承認が必要な行動の一覧は、業務担当部署と内部統制部署が一緒に決めます。
元に戻しやすい行動から任せます
最初は、書類の確認や不足項目の発見のように、結果を簡単に取り消せる行動から任せます。判断の記録を見ながら範囲を広げていきます。初期の段階で書き込みの権限まで与えると、誤りがそのままシステムに反映されてしまうおそれがあります。
範囲を広げるときは、まず前の段階の記録で、AIがよく止まった箇所と、人が結果を直した箇所を確認します。それらの箇所が減ったあとに、次の行動を任せるほうが安全です。
行動の記録を段階ごとに残します
エージェンティックAIは複数の段階を経るため、最終結果だけを見ても、どこで問題が生じたかはわかりにくくなります。どのツールを、どの入力で呼び出し、どの結果を受け取り、その結果をもとに何を決めたかを、段階ごとに記録します。
この記録は、誤りの原因を探すのに使われ、判断ルールやツールの設定を見直す根拠になります。記録は担当者が読める形で残す必要があります。人が理解できない記録は、問題が起きたときに説明資料として使いにくいためです。
国内環境でのエージェンティックAI
国内の金融と公共分野では、外部APIの呼び出しがネットワーク分離の規定で制限されることが多いため、エージェントが使うモデルとツールは社内で動作する必要があります。
人工知能基本法は、施行令とあわせて2026年1月22日に施行されました。生成AIや高影響AIに基づくサービスであることを、あらかじめ利用者に知らせることを求めています。また、法律が定める10の分野については、リスク管理や人による管理・監督などの責務を求めています。審査などの業務にエージェンティックAIを使う場合は、これらの要件をフローに反映する必要があります。
よくある質問
エージェンティックAIとAI Agentは同じものですか?
近いものですが、使われ方は少し異なります。エージェンティックAIは自ら計画して実行する性質を、AI Agentはその性質を備えたシステムを指す場合が多いです。
エージェンティックAIを使えば、人は要らなくなりますか?
いいえ。目標、権限、判断基準を定め、取り消しにくい行動を承認する役割は、人が担います。AIが処理した結果の一定割合を抜き取りで確認する役割も必要です。
ハルシネーションのリスクはありませんか?
あります。複数の段階を経るあいだに、誤った途中の結果が次の行動に引き継がれるおそれがあるため、段階ごとに根拠を確認して記録する仕組みが必要です。
どの業務から始めればよいですか?
結果を元に戻しやすく、判断基準が文書として整理されている確認業務から始めます。最初の数週間は、すべての行動を記録し、人が結果を確認しながら基準を磨いていきます。
既存の自動化ツールと一緒に使えますか?
使えます。ルールが明確な区間は既存の自動化が担当し、判断が必要な区間をエージェンティックAIが担当する構成が一般的です。
コストと処理時間はどうなりますか?
段階ごとにモデルとツールを呼び出すため、呼び出しの回数に応じてコストと処理時間が増えます。業務ごとに必要な段階数と呼び出しの上限を決めておくとよいです。
成果はどのように見ますか?
回答の品質よりも、業務が最後まで処理された割合、人が介入した割合、誤った行動が発生した件数で見ます。
AIに任せたい業務の手順を教えてください。AIが自ら処理する区間と、承認が必要な区間に分けて整理いたします。
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